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ブラインドネス(2008) [サスペンス]

第61回カンヌ国際映画祭オープニング作品。
第21回東京国際映画祭特別招待作品。

原題:Blindness
監督:フェルナンド・メイレレス

あらすじ。
突然失明する奇病が蔓延。
そのなかでひとり、見えている女性がいた。


うわあ。

という感じの映画でした。
実はカンヌオープニングって知らなかったので、
「世界中が失明する病って……まあありだよねそういうのも」
って、ゾンビ映画くらいの感覚で見はじめたら、重い重い。

※ここからの「見えない」は映画中の設定のことで、
現実の全盲・ロービジョンの人には当てはまらない不適切な表現が
あることをご了承ください※

映画を観ながら
「誰も見てないからいいじゃん」
という言葉を思い出した。

見えなくなった人たちは、(人から)見られない存在になって、そして人からどう見られるかという観点を失ってしまう。
もちろん見えてないからなりふり構わなくなっちゃってるっていうのもあるだろうけれど、
「誰もみていないと思っていても、自分は見ているから悪いことはしてはいけない」と説かれた道徳の裏返しの要素もあるような気が。
見えないことで客観性を失って、自分だけがよければよくなってしまう人たち。
電車で化粧する女性の問題みたいだね(笑)
環境によって人が容易に人間らしい判断を失ってしまう可能性があることは、奇しくも1本前に見た映画「es」のもととなった実験で証明されていたけれど、この映画もそういう映画に思えた。

でも一方で、人間らしさを失わない人たちもいるわけで。
食料を牛耳ってるグループが、配給が欲しければ女をよこせとか
品性のないことを言い出すわけですが、
誰も見えてないので何人女性がいるかなんて把握できないにも関わらず、班のひとたち(と自分)の食料のために、志願する女性たち。
暴行されて殺された女性のために、水で体を清めるシーンは切なくなってしまうよ。

でももしかして、この人たちが人間性を失わなかったのは、
隔離施設にひとりだけ「見える」女性が、紛れ込んでいたことを感じていたからなのかな。
とか思ってみた。
(ちなみに、見える女性は、感染した夫と離れたくなくて見えないと嘘をついて隔離されていたので、見えることは秘密になっていた)

隔離施設から出られたはいいけれど、
身なりにも構わず、這い回って「餌」をあさる人たち。
極限状態のなかで秩序を失っていく世界を、
ただひとり「見える」女性だけが目の当たりにしている。

終盤、隔離施設から抜け出した人たちは、見える女性に助けられて、
女性の家で共同生活を始める。
そこで、ささやかな幸福を見出しはじめたとき、
最初の発症者だった男が「見える」ようになった。

その安堵感とか幸福は、こうして文字にすると薄っぺらいんだけれど
2時間一緒にストーリーを追っていくと、「ああ、」ってなる。
暖かいお湯につかったときの「ああ、」に近い。

文字にすると、幸せはすぐ隣に転がっている、とか
そういったことなんだけれど。
その当たり前で、それゆえに陳腐になりがちなことを
こんなに鮮烈に表現できるのはすごいなと思った。

ちなみに日本からも、伊勢谷友介と木村佳乃が出演しています。
それすら知らなかったので、びっくりした。
そうか、木村佳乃が外国の映画出るって聞いたようなきがしたけどこれだったのか。
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